土の上に生きて〜朔の薪割り歌〜 <風と土SLN#7>
さまざまな出会いと縁に驚かされた2017年。この歌の導きは大きかったように思います。まだきちんと報告していなかった、美杉移住の経緯も含め『風と土』セルフライナーノーツ最終話。お付き合いください。
2年半ほど前のこと。長らく福島でお世話になっていた音響さんに「同級生が三重に住んでいるから」と紹介されて出会ったのが沓澤敬さん。「日本料理 朔」というお店がオープンする直前のこと。気さくな人柄も後押しでしたが、敬さんと家族の生き方に惹かれ、お店がオープンすると折を見て食事をしに。慣れない懐石料理。こんなにもすーっと受け入れて感動できるものかと。そんな体験でした。
お店が休みの冬に訪ね、ゆっくりお酒など。日が落ちる頃に響いた薪割りの音。その光景とリズムが体に残り、書いたのがこの薪割り歌でした。2011年から筒香(和歌山)で体験してきた農作業、出会う民謡。ああそうか、僕が憧れるのはこういうものかと思っていたさなか、不意に生まれた仕事歌でした。
この年の秋、朔で、土地の料理と三重の酒、そこに生まれる歌というコラボイベントが実現します。その会でこの歌を初披露。終えて身内的打ち上げにて、残った三重の酒を酌み交わしながら、「美杉いいなぁ」と言ったのがきっかけ。「実はいいところがあって」と妻の佐知子さん。いやぁ住むとかそういうんじゃなくて・・・でも見るのはおもしろそうだし、あ、誰かに紹介できるし・・・と訪ねた家。その家に、この曲がCDとして発売される頃に住むことになったというのは、運命と言っておいた方がすっきりします。
気づけば40年出会うことのなかった親戚に囲まれ、さまざまな出会いが美杉にまたつながり、というのは少し恐いほどの縁。探し求め選ぶ移住ではなく、自然に逆らわず生きていく中で出会う人や土地。それは旅で交流が続いているさまざまな地域との関係にも通じるものに感じます。
風と土。土への敬意と憧れを持ちながら、やはり流れに身を置くということのような気がします。美杉での経験がまた歌となり、みなさんに聞いてもらえると思っています。
活動20年の節目も無事横浜で歌うことができました。来年は美杉で新たなお誘いができると思います。今年も一年ありがとうございました。アルバム『風と土』あらためて聞いてください。
土の上に生きて
冬が来る前に 薪をそろえて
斧を振りおろす 音が山に響く
黄昏はひとときで みな影になる
煙がのぼってゆく 月をかすめる
憧れではなく 流れに身を置く
ただゆっくりと ただ還ってゆく
ここに立つ命 山と向き合い
受け入れられたか そして朔になる
土の上に生きて 風を仰いで
空に伸ばす体 山に溶けてゆく
Choji『風と土』
(ジャケットの絵は朔の沓澤佐知子さんによるもの)
1. ホーボーワルツ
2. キヨちゃんのバギー
3. まわせ一升ビン
4. 収穫祭〜はたごんぼの歌〜
5. 村祭
6. かくれんぼ
7. 土の上に生きて〜朔の薪割り歌〜
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